所得拡大促進税制の30年度税制改正について~間口は広がったが減税幅は狭まる~

改正後の所得拡大促進税制の適用年度は以下の通りです。

個人…平成31年1月1日開始年度

法人…平成30年4月1日開始事業年度

※9月決算の法人の場合には、平成30年10月1日から始まる事業年度からの適用になります。

 

今年も税制改正大綱が出まして、高所得者には増税の方向になりました、といった記事は色々なホームページやブログでご覧になられたかたも多いかと思います。

今回の記事は、人を雇っていて、従業員の給料を毎年昇給している法人や、同じく従業員の給料を昇給している個人事業者の方に向けて、所得拡大促進税制の30年度の改正について解説していきたいと思います。

誰もかかえず、ひとりで仕事をされているフリーランスの方には関係ない記事になってしまいますがご了承ください。

そもそも所得拡大促進税制とは??

簡単に言いますと、毎年従業員の給料を昇給させている事業者は、減税してあげますよ、といった制度です。

具体的には、

現行制度

要件

①平成24年度の給料総額より、今年度の給料総額が3%以上増加していること(中小企業者のみ)

②去年の給料総額<今年度の給料総額

③去年の一人当たりの給料単価<今年度の一人当たりの給料単価 

 

以上3つの要件を満たしている場合には、

(今年の給料総額-24年度の給料総額)×10%

を法人税から差し引きますよ(但し法人税の20%までを限度)、といった制度です。

(資本金が1億超の大企業は更に要件が厳しくなっています。)

こちら、従業員数が多い会社の場合には、その減税効果のインパクトも大きいです。

ポイントとしては、平成24年度の給料に比べて、今年の給料はいくら上がったのかその差額の10%を法人税から引いてあげるよ、というのがミソなんです。

例えば平成24年に従業員30人、一人当たり年間240万円の給料を支払っていて、毎年月額5,000円ずつ昇給している会社だと、

平成24年度給料総額240万円×30人=7,200万円

平成29年度給料総額270万円×30人=8,100万円

(8,100万円-7,200万円)×10%=90万円

90万円も法人税が減る制度となっています。

毎年昇給している会社であれば、平成24年度の給料と比べての差額で、減税が決まりますので、年々減税できる金額が増えていきます。

ポイント
3つの要件を満たしている場合には、24年度の給料総額から今年の給料総額の差額に10%を掛けて税金を減らせます。
 

 

今回の改正

要件
①去年の一人当たりの給料単価に比べて、今年の一人当たりの給料単価が1.5%以上上回っていること

この一つの要件を満たしていれば、

(今年の給料総額-前年度の給料総額)×15%

を法人税から差し引きますよ(但し法人税の20%までを限度)、といった制度に変わりました。

要件は現行制度よりも緩くなりました。

現行制度は3つの要件を満たさなければならなかったのに、今回の改正では平均単価さえ去年より上回っていれば適用できる形になります。

では、減税できる金額はどうなのか、

差額にかけるパーセントは10%から15%に引き上げられ、一見優遇されているかと思いますが、差額の計算が、改正により平成24年度の給料に比べての差額ではなく、前年度の給料からいくら上がったのか、に変わってしまいました。

上記の例でいうと、

平成29年度給料総額270万円×30人=8,100万円

平成30年度給料総額276万円×30人=8,280万円

(8,280万円-8,100万円)×15%=27万円

90万円の減税から27万円の減税に減ってしまう結果になりました。

毎年昇給させている会社にとっては、不利になってしまったことは非常に残念な改正になったと言えるでしょう。

(昨年度だけ急激に昇給させた場合には、改正後の方が有利になるケースもありますが、一般的ではないでしょう。)

ポイント
税金を安くするために3つ必要であった要件を1つにして、適用を受けられる会社、個人事業者の間口を広げたが、減税できる金額を減らす内容に。
 

 

上乗せ措置ができました

税金を減らす金額は下げられてしまいましたが、改正には上乗せ措置ができました。更に厳しい要件を満たすと、税金を減らす金額を増やすことができます。

要件

①去年の一人当たりの給料単価に比べて、今年の一人当たりの給料単価が2.5%以上上回っていること

②教育訓練費の額が去年に比べて10%以上増えていること。

 

この二つの要件を満たせた場合には、

(今年の給料総額-前年度の給料総額)×25%

15%から25%になるので、さらに差額の10%分を上乗せして税金を減らすことができる訳です。

ここでいう教育訓練費とは、従業員に仕事をさせるうえで必要な知識、技術を習得させるうえで、支払う外部セミナー代だったり、講師の謝礼だったりします。これが、前期に比べて10%以上増加していて、かつ、給料単価が2.5%以上増加していれば、さらに税金が減ることになります。

上記の具体例ですと、

(8,280万円-8,100万円)×25%=45万円法人税・所得税が減らせます。

それでも改正前の90万円の減税には届いていないので、やはり減税幅としては少なくなったのではないでしょうか。

 

まとめ

今回は所得拡大促進税制の改正について書いてみました。

対象となる要件を3つ必要であったものが、1つとなり、適用を受けやすくなりましたが、減税できる金額は平成24年度からいくら昇給させたのか、から、前年度からいくら昇給させたのか、という計算になったため、毎年昇給されている会社や個人事業者にとっては、減税できる幅は狭くなりました。

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ABOUTこの記事をかいた人

小幡剛史(おばたたけし) 1984年5月15日生 2018年12月に独立した30代のさいたま市浦和区の税理士です。 クラウド会計を活用して経理効率化が得意です。 二児の父です。 週末はスーパーに開店前から並んで、賞味期限ギリギリ激安おつとめ品をゲット!することが最近のマイブームです。 趣味はバイク(ゼファー750RS)・写真(NikonD610)・家庭園芸・DIY・レザークラフト・山登りです。