個人事業主が法人成りするに当たって、最後の確定申告で注意すべきことについてお伝えします。
今までと同じように申告書を作ってはダメな場合があるんですよ。
貸倒引当金の計上はできない
今まで貸倒引当金を計上していた個人事業主の方は、法人成りする最後の確定申告では貸倒引当金を計上することはできません。
貸倒引当金というのは、来年以後、未収入となっている金額(売掛金や未収入金など)の一部が回収できなくなることを想定して、見積りで経費を計上することができる、あくまでも経費の特例のような制度になっています。
売掛金や未収入金などの債権は個人事業主→法人へ移転しているので、確定申告の時にはその債権はゼロになっています。
なので、将来発生する貸倒はナシということになりますので、貸倒引当金の計上はできません。
減価償却は月割計算をしなければならない
固定資産にかかる減価償却は1/1~法人成りまでの月割計算を行わなければなりません。
つまり、1年分丸々減価償却はできないということです。
例えば9月15日に法人成りした場合には、1月から9月までの9ヵ月間で減価償却をします(1年分の減価償却金額×9/12)。
9月は15日しかありませんが、ひと月未満は切り上げて1ヵ月として計算してしまって大丈夫です。
青色申告特別控除の65万円控除は全額計上して大丈夫
65万円控除も減価償却と同様に月割計算しなければならないのかというと、65万円控除は丸々受けることができます。月割計算しなくてもOKです。
来年かかってくる事業税を経費に入れることができる
事業税は、3月に申告したあと、6月頃県税から納付書がやってきて納付するものですが、法人成りした場合にはその事業税を3月の確定申告書に「概算」として経費計上することができます。
以下算式をご紹介しますが、分かりにくいので、税理士におまかせください。
(A±B)R÷(1+R)
A・・・事業税の課税見込額を控除する前の当該年分の当該事業に係る所得の金額
B・・・事業税の課税標準の計算上Aの金額に加算し又は減算する金額
R・・・事業税の税率
貸借対照表にのっている資産を売却処理する
事業用で使っている資産を法人に引き継ぐためには、売却という形になります。
従って、個人の方で事業所得の「売上」であったり、「譲渡所得」として申告をしなければなりません。
棚卸資産
法人成り直前まであった棚卸資産は法人へ売却すると、「事業所得」として「売上」計上します。
その時の金額ですが、
・仕入値
・販売価額の70%
となります。
この金額よりも小さい金額で行ってしまうと、会社の方では安く仕入れてできるということなので、会社の方は「受贈益」という形で余計な税金が取られてしまいます。
また、逆に高い金額で売った形になれば、個人事業主の方でムダな税金が取られますし、会社の方では経費になるからいいのでは?と疑問に思うかもしれませんが、不相当に高額な部分は「役員賞与」として認定されるリスクがあります。
「役員賞与」になってしまうと、源泉税は取られるは、法人の方では経費にはならないはのダブルパンチを食らうリスクがあります。
いずれにしても、適正な金額で法人に売ることが肝要です。
固定資産
車両や事業用で使っている機械装置や器具備品などの固定資産については、いわゆる「時価」という考え方で売却します。減価償却したあとの帳簿価格はあくまでも時価が算定できない場合の代替手段として考えます。
ただ、時価といっても、税理士でも判断に迷う部分があります。その場合にはその道に詳しい精通者に見積りをとってもらってもよいでしょう。
ちなみに私の実家は中古車売買を40年以上行ってきていますので中古車の「時価」の算定については、それなりの実績と自信がございます・・・(笑)
さらに、固定資産については、個人事業者は「譲渡所得」として申告をしなければなりません。
そして、消費税の課税事業者であった場合には、固定資産の譲渡に係る消費税も申告書に反映する必要があります。
法人成りしてからの役員報酬を給与所得として申告
法人成りしたあと、役員報酬として個人の方で受け取ると思います。
もちろんこの役員報酬も申告しなければなりませんので、給与所得として申告をします。
一般的には「給与所得控除」が効いているので、安い税金で済ますことになります。
まとめ
法人成りした場合に、個人事業主が行う確定申告で注意すべき点についてまとめてみました。
最後の確定申告ではいつもとは違う処理が色々と出てきますので、ご注意いただければと思います。
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