社内外注先が常駐する事業所は要注意!~税務調査で指摘されるリスクについて~

建設業やIT関連業などを筆頭に、様々な業種で、仕事をお願いするときに、雇用契約をせず、請負といった形で社内に常駐して仕事をしてもらっている会社が多いかと思います。

しかし、実態としては、他の雇用契約している社員と働き方はなんら違わない場合があります。

これを税務調査で指摘された場合にはとんでもない追徴課税を支払うことがあります。

社内外注がいる法人・個人事業者はこれから説明する当記事をご覧になって、振り返りを行っていただき、社内外注の方の働き方を見直すか、税務調査対策を講じられてください。

社内外注とは

一般的に社内外注とは、外注先を自社のスペースに常駐させて仕事を行わせている状態をいいます。

実はこの「同じスペースで仕事を行う」ことが危うい状態を引き起こします。
というのも、当初は「社員」と「外注先(他社・他人)」との関係が明確であったものが、次第と「自社」と「他社」の区別があいまいになっていくケースがよくあるからです。

では、何が問題になるのでしょうか。

とんでもない金額の消費税と源泉税が追徴課税される恐れ

社内外注先と社員との働き方が同じような形になってしまうと、税務調査で、
「その外注先の働き方の実態は社員と一緒ですね。ということは外注費として処理されている金額は給与扱いとなります。」
と指摘されてしまいます。

この指摘で問題になるのが、消費税と源泉税となります。

消費税が問題となる理由

消費税は、外注先に支払う金額は、「消費税は課税対象」のため、外注先に支払った金額のうち、8%分は消費税を支払ったことになるため、売上にかかる消費税から差し引いて消費税の納税額を計算することができます。

一方給与は、「消費税は課税対象外」のため、いくら給与を支払っても消費税を支払ったことにはならず、売上にかかる消費税から差し引くことができません。

外注先への支払いが「給与」として認定されてしまうと、外注先に支払った金額にかかる消費税が追徴課税されることになります。

例 年間540万円を外注先に支払う場合

仕訳

(1)外注費として計上

  外注費   5,000,000   現金預金 5,400,000

  仮払消費税 400,000

(2)給与として指摘

  給与 5,400,000 現金預金 5,400,000

結果、仮払消費税400,000円が追徴課税となります。

源泉税が問題となる理由

通常給与として支払っている場合には、源泉税を天引きして支払いをするわけですが、税務調査で指摘されるまでは外注先として支払っているので、源泉税は天引きしていないケース、或いは、報酬にかかる源泉税の10.21%分しか天引きしていないケースがほとんどだと思います。

しかし、給与として認定されてしまうと、給与にかかる源泉税の徴収が漏れている、と指摘されてしまいます。

報酬にかかる源泉税の10.21%を天引きしているケースなら大丈夫じゃないか、と思われるかもしれませんが、実は、もっと天引きする必要があります。
一般的に、二カ所以上から給与をもらわない限り、雇用されている社員は「扶養控除申告書」を会社に提出している場合がほとんどだと思いますが、その場合には天引きする金額が少なくて済む「甲欄」で計算することができます。
しかし、そもそも外注として支払っているので、「扶養控除申告書」は外注先から貰えてるはずはありません。
なので、「扶養控除申告書」がない場合には、「乙欄」と呼ばれる高い税率で、源泉税を天引きしなくてはならなくなります。
消費税よりも高額な追徴課税が見込める
ので、ここが税務調査官の狙い目なのです。
乙欄徴収の金額は国税庁のHPで掲載されていますので、こちらのページをご参照ください。

では消費税の例をもとに、乙欄だと源泉税がどのくらいかかってくるのかを計算してみます。

例 年間5,400,000円を月450,000円ずつ渡すとします。

450,000円にかかる乙欄の税金はリンク先の表より114,600円となります。
これを12か月分に直すと、114,600円×12=1,375,200円
仮に報酬として10.21%天引きしていたとしても、5,400,000円×10.21%=551,340円
差し引き1,375,200円-551,340円=823,860円も追徴課税されることになってしまいます。

追徴課税合計

消費税400,000円
源泉税1,375,200円
合計1,775,200円

社内外注1人わずか1年分で1,775,200円も追徴課税されることになってしまいます。

もし3年間、社内外注の方が社員と同じような働き方をしていれば、税務調査では少なくとも3年分は遡って搾り取られますので、3倍の5,325,600円も課税されてしまいます!

しかも、これは、わずか一人だけの金額ですので、人数が多ければ倍々になってきます。

それだけ、この社内外注というのは、リスクが高い状態というのがお分かりいただけましたでしょうか。

「給与」と「外注費」の分かれ目となる判断基準

働いている実態が「請負」・「準委任」・「雇用」のどれに該当するのか

社内外注の働き方が「請負」・「準委任」・「雇用」のいずれになるのか、その実態がどうなっているのかを様々な観点から総合的に判断されますが、まず、「請負」・「準委任」・「雇用」とはどういうことを言うのかご説明します。

①外注費:「請負契約」または「準委任契約」に基づいて提供されているサービス

②給与:「雇用契約」に基づいて提供されるサービス

①についての説明です。

「請負契約」とは、仕事を請けたほうが、仕事の完成を約束して相手方がその完成された成果物に対して報酬を支払うことを約束する契約になります。仕事の完成に対して報酬を支払う、というポイントがミソです。

結果さえ出来上がった状態であれば、報酬を支払うことを約束しているので、仕事をお願いする方には、やり方をとやかく言う権利(指揮命令する権利)はありません。

「準委任契約」とは、発注する企業などが、相手方にやり方などお任せして一定の仕事をお願いして、その報酬を支払うことを約束する契約になります。

仕事を任された方は、自分の管理責任の元、業務を行いますので、仕事をお願いする方には、上記「請負契約」と同様、やり方をとやかく言う権利(指揮命令する権利)はありません。

②の「雇用契約」ですが、相手側の指揮命令下に属してサービスを提供することを約束して、その対価として報酬を支払うことを約束する契約になります。

念のためですが、たとえ契約書で「請負契約」を締結していても、実態が指揮命令に属しているなどの状態だった場合には、やはり、「雇用契約」になってしまいます。

「請負」・「準委任」・「雇用」が曖昧な場合の判断基準

実際問題、上記「請負」・「準委任」・「雇用」が明らかでないケースは多々あるかと思います。

そのような明らかにできない場合には次に掲げる考え方を総合的に勘案して判断します。(消費税法基本通達1-1-1)
どれか一つでも当てはまったら課税とかではなく、様々な状況を考慮して、雇用なのかを判断します。

  1. 指揮命令を受けるかどうか
    これが一番の判断基準になります。指揮命令に属していると判断されてしまうと、「給与」として認定されてしまう可能性は、かなり高くなってしまいます。
  2. 社内外注の方以外に仕事を代わってもらえるか
    こちらが要求した仕事さえやってもらえれば、社内外注がその下請けに出そうがよいはずです。
    もしその社内外注の方に仕事をやってもらわなければならない、ということであれば、社員として同視している、と判断されてしまいます。
  3. まだ成果物が出来上がっていないうちに災害などで納品できなくなってしまった場合、既に完了した作業費などについて請求することができるか
    外注先であれば、成果物を納品して初めて相手方に請求することができるので、仕事が完成しなくても作業費を請求できるのは雇用と同じ、という考え方です。
  4. 仕事に必要な材料や器具備品の支給を受けているか。
    外注先であれば、仕事に必要なものは自分で用意するのが当然です。タダで使わせてもらえるなら、雇用されているのと同じでしょ、という考え方です。

参考まで

調査で指摘を受けないためにしておくこと

契約書を整備しておく

まずは請負契約、準委任契約であることを書類上明記しておきましょう。口約束だけでは、調査官は納得してくれません。

必ず請求書を作ってもらうこと

外注先であるのなら、請求書を作るのは当然です。請求書がないのに支払っているのは給与と同じと言われてもおかしくありません。

時間単位で報酬を支払うのではなく、完成した仕事に対して支払おう

時間単位で支払うという取り決めにしてしまうと、時給計算=給与ととらえられかねません。
仕事の内容によってはタイムチャージもありますが、完成した成果物があって初めて支払が行われるという内容のほうが調査官から指摘されるリスクは低くなります。

タイムカードは押さない!

社員と同じようにタイムカードを押してしまっている場合には、即やめましょう。
タイムカード自体、労務管理に使用するものなので、外注先が押す性質のものではありません。タイムカードを押すこと自体、実態は雇用契約と同じですよ、と自ら宣言しているようなものです。

組織図や座席表に載せない!

会社が作成する組織図や座席表に、社内外注は載せないようにしましょう。
特に組織図に載せてしまうと、その会社の組織の一員として働いている=雇用されていると判断されてしまいます。

契約内容をもう一度見直そう

実態は雇用と、とらえられない内容になっていないか、再度確認してみましょう。

・遅刻・欠勤したら支払を減らすになっていませんか?
 →外注であれば、遅刻・欠勤なんてありえませんね。

・社員と同じように有給休暇制度があったり、福利厚生が受けられたりしていませんか?
 →外注先は社外の人なので、当然社員と同じような制度は受けられませんよね。

・うち以外の他社からの仕事は受けてはいけない、など仕事を制限していませんか?
 →外注であれば、誰からどのような仕事を受けようと勝手ですよね。

…などなど、これらは、雇用されているのか外注なのかの判断材料の一部です。
社内外注に対して行う色々な行動について、社員でなかったら(社外の取引先だったら)、こうはしないよね、と再点検してみてください。

まとめ

今回は社内外注がいた場合に問題となる、課税上の取り扱いについて説明しました。

税務調査で問題になるのは、上記に書かれている、雇用になるか、請負・準委任になるかの判断材料が、何個当てはまるかが問題となるのではありません。

それぞれの企業においてそれぞれの社内外注の方の働き方の状況を、様々な観点から分析されて、総合的に判断されます。
この総合的にが、くせもので、画一的な判断はありません。
同じ状況下であっても、調査官によっても、税務署によっても見解は異なります。
税務調査で指摘されないようにするためには、上記の判断材料を一つ一つ潰していき、社内外注の立場をはっきりさせておきましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

小幡剛史(おばたたけし) 1984年5月15日生 2018年12月に独立した30代のさいたま市浦和区の税理士です。 クラウド会計を活用して経理効率化が得意です。 二児の父です。 週末はスーパーに開店前から並んで、賞味期限ギリギリ激安おつとめ品をゲット!することが最近のマイブームです。 趣味はバイク(ゼファー750RS)・写真(NikonD610)・家庭園芸・DIY・レザークラフト・山登りです。