【法人成り】よく分かる!会社設立の8つのメリットと6つのデメリットとは?

個人事業主の方で法人設立を検討されている方は必見!
今回は会社設立すると、どんなメリットやデメリットが生まれるのか解説します。
ただ闇雲に法人成りすればいいというものではありませんよ。

メリット1 自分に給料を払って税金を安くする

個人事業主の場合

個人事業主の場合の税金計算は、売上ー経費=利益を出して、その利益に税金がかかるという仕組みになっています。図にするとこんなイメージです。

法人の場合

法人の場合、自分に給料をはらうことができるようになりますので、給料の分利益を減らすことができます。
図にするとこんな感じです。

法人で利益を減らすことはできたけど、個人の方で税金がかかっちゃうから、変わらないんじゃないの?
そんな疑問もあると思います。
しかし、個人の方は「給料(役員報酬)」という形でお金をもらうので、「給与所得」として所得税の税金計算を行います。
この給与所得という計算には、「給与所得控除」といって、サラリーマンの概算経費のような制度があります。
図にするとこんな感じです。

このようにもらった給料の全額が税金計算の対象にされるわけではなく、「給与所得控除」を引いた金額に対して税金計算されるわけです。
つまり、法人設立をすると給与所得控除の分だけ税金がかからない、ということになるわけです。
これが法人設立して税金を減らすことのできるメリットになるわけです。

ちなみに、給与所得控除の金額はこのようになっています。

法人設立すれば必ず税金が安くなるわけでもない

ただし、給与所得控除を受けられれば必ず税金が安くなるとも限りません。
というのも、法人税と所得税では税率(%)が違っているためです。

法人税だと最低でも15%かかってくるのに対し、所得税だと最低税率5%となります。

その他、個人事業の方だと290万円以上利益が出なければ事業税がかからないなど、利益が出ていない個人事業主には税金が少なくなる仕組みになっています。

つまりある一定の利益が出ている法人であれば、法人化した方が税金的にトクになると言えるわけです。

ではどのくらい利益がでていればいいのかというのですが、後ほど述べますが法人化すると社会保険に加入義務が発生しますので、一概には言えないのですが、厚生年金部分を貯金と考えると、大体350万円~400万円程度利益が出てくると、法人化をオススメしています。

メリット2 退職金を支払って税金を安くする

個人事業主の場合

個人事業主の場合、自分に退職金を支払って経費にするということはできません。
あくまでも、毎年「売上ー経費=利益」を計算して、利益に対して税金がかけられるという計算方法になっています。
ただ、従業員を雇っていて、その従業員が退職したから退職金を払う。そんな場合には従業員への退職金は経費になります。
しかし、奥さんなど身内に専従者給与を払っていて、その人が辞めたから退職金を払うという場合には、やはり退職金は経費として認められません。
図にするとこんな感じです。

法人の場合

一方、法人の場合にはどうなるかというと、自分・奥さんなどの身内・従業員すべて退職金の支払いがOKとなります。
図にするとこんな感じです。
ちなみに、ボーナスについては、役員の場合ボーナスが認められず、払ったとしても経費にはなりません。
一応事前に届出書を提出した場合には認められるのですが、●月●日に××円払うということまで出さなければならず、お世辞にも使い勝手はいいと言えないので、オススメはしていません。

 

退職金で税金が安くなるとは?

じゃあ、退職金を払って税金が安くなるということはどういうことなのでしょうか?
もちろん、会社の方で退職金を払えば経費で計上するということは分かるかと思いますが、もらった個人の方で沢山税金が出てしまっては意味がないですよね?

しかし、退職金を受け取った場合の税金計算の仕組みがスゴくて、圧倒的に税金がかからない仕組みになっています。その計算方法がこちら

退職金にかかる税金
(退職金ー退職所得控除※)÷2×税率(5%~45%)
 


式だけ見ても分かりずらいので解説しますと、キモは「退職所得控除」「÷2」になります。

退職所得控除と÷2のすごさ

退職所得控除とは、20年以下だと「勤務年数×40万円」、20年超えると「800万円+超えた年数×70万円」です。

つまり、会社設立して20年経って退職金をもらう時には20年×40万円=800万円まで1円も税金がかかりません。
30年ならば、800万円+10年×70万円=1500万円まで税金ゼロです。
会社にお金さえ残っていれば、これはスゴイお得な制度なのです!

さらに、÷2ですが、例えば会社設立してから30年で、退職金を2000万円準備できたとしたら、退職金の税金計算は
(2000万円ー1500万円)÷2=250万円となります。

÷2のおかげで、500万円で税金計算されるところが、250万円となります。
ここに、所得税率をかけるのですが、500万円ですと20%の税率になるところが、250万円なので、10%の税率にすることができます。

このように、「退職所得控除」と「÷2」の相乗効果によりぐぐーんと税金を下げて自分の手元(個人)の方にお金を移せるという仕組みになっています。

メリット3 保険料の経費計上ができる

個人事業主の場合

個人事業主の場合、どんなに保険料を払っていても、マックスで12万円までしか保険料控除として経費計上できません。

法人の場合

積立型の保険は経費にはほぼ落ちないものになっていますが、基本的に掛け捨て型の保険であれば、上限はなく経費になります。
万が一死亡した場合などで保険金が会社に入ってきても、退職金を計上することによって、会社の利益と経費を相殺し、法人の方で税金を少なくすることができます。
さらに、もらう個人の方では先ほど説明した退職金として会社から受け取ることができるので、ほとんど税金がかからずもらえるという仕組みになります。

メリット4 消費税が2年間免除となる

個人で消費税を納めている人はメリット大

売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税を納税する義務が発生します。
個人でも法人でも同じ取り扱いですが、法人を設立すると、個人での売上は一切関係なくなりますので、あえて課税事業者の届出を出さない限り、強制的に免税事業者になります。

つまり、法人を設立したら2年間は免税事業者(消費税を納税しなくてもよい事業者)になります。
個人事業主で、消費税を納めている方にとっては大きな節税になりますね。

注意しなければならないのが、個人事業者で「簡易課税の届出」を出していたり、「課税事業者選択届出書」を出していたり、各種届出書を出している場合です。

個人の時に出していた届出書は、法人になってもその効果を引き継ぐことはできませんので、すべて出し直しになります。

インボイス制度開始されるとメリットは少なくなるかも・・・

現行の制度だと法人化して2年間消費税が免除になるのは大きな節税となるのですが、インボイス制度が始まるとそのメリットは少なくなるかもしれません。

そもそも、インボイス制度というのは、簡単にいうと消費税を納める事業者でないと消費税を請求することができなくなる制度になります。

つまり、インボイス制度になると免税事業者となっても消費税をお客様に請求することができません。

メリット5 決算月を自由に選べる

個人事業主の場合

個人事業主の場合、確定申告が強制されるので1月~12月までの期間で損益を計算して、3月15日までに申告するという形になります。
4月~3月にしたいといっても一切認められないので、自由に期間は決められません。

法人の場合

決算月、期間とも自由に決められます。
決算日は月末でなくてもOKです。

以前勤めていた会計事務所のお客様のなかには、4月21日~3月20日の決算期間にした方もいらっしゃいました。
また、1年区切りでなくても、半年区切りでも構いません。

例えば、例年2月に大きな売上が上がって一年分の利益を稼ぎ出すような商売をされている方の場合、3月決算はオススメしません。
というのも、2月にどーんと利益が出た場合に、決算まであと1カ月で出来るような節税対策というのは限られているからです。その場合には、閑散期である8月とかに決算月を持ってきた方が色々な対策ができます。

そういう意味では個人に比べて自由な日にちや期間で決められるのが法人の特徴です。

メリット6 赤字が10年間繰り越せる

個人事業主の場合

赤字であっても基本的には3年間しか繰り越すことができません。

法人の場合

赤字の場合には10年間も繰り越すことができます!
しかも自分への給料を払ったあとの赤字でも繰り越すことができます。

メリット7 減価償却せずにとっておける

個人の場合

個人の場合、固定資産を買って確定申告する場合には、減価償却は強制になります。
つまり、利益が出ていなくても強制的に減価償却を「しなければなりません」

法人の場合

法人の場合、減価償却はしてもしなくてもどっちでもいい(任意)ことになっています。
なので、利益が出ていないから今回は減価償却しないで、来期以後にとっておこう、ということが可能になります。
ただ、注意してほしいのは、とっておいても2年分の減価償却を1年の内に一気に使うことはできません。
あくまでも1年分の減価償却は1年で使う、という形です。

メリット8 自宅を社宅扱いにできる

個人の場合

自宅を事業用として使っている場合、あくまでも家事按分という形で、プライベートルーム部分の家賃は経費にはできません。
例えば30%部分しか事業用で使っていないのであれば、家賃×30%だけが経費計上になります。

法人の場合

法人の場合、全く事業用で使っていない物件の家賃でも法人契約にすれば、家賃のほとんどを経費にすることができます。
正直これはかなりおいしい制度になります。

家主→会社→自分、という流れで貸し付けることになるわけですが、会社が個人に貸すわけなので、いくらかは会社は個人から家賃を取らないといけませんよ、という意味になります。

その家賃の算定方法はこちら

この算定方法は床面積が99㎡(約30坪)までの場合なのですが、これで計算すると、大体家主に払う10%~20%くらいの家賃を会社に入れればいいのです。
つまり、自分が住んでいる家賃の80%~90%は経費に落とせてしまいます。

個人事業主は事業用として使っていなければいけないし、しかも実際に事業として使っている割合でしか経費計上できなかったものが、会社にしてしまえば全く事業用として使っていなくてもほとんどが経費にできてしまうんですね。

デメリット1 会社設立にお金がかかる

続いてはデメリットです。

会社設立にあたってのデメリットは、まずは設立までにお金がかかるということですね。
資本金の金額によっても変わってくるのですが、株式会社設立には約30万円、合同会社設立には約10万円くらいがかかります。

デメリット2 決算申告書類が複雑になる

法人の決算書・申告書の作成には、個人事業主より専門的な知識が必要なため、難易度がぐーんとアップします。
また、難易度だけでなく、内訳書の作成や、個別注記表やたくさん法人税申告書別表作成、県・市への地方自治体への申告書作成・提出など、手数もかかるため、どうしても税理士報酬がアップせざるを得ません。

デメリット3 赤字でも税金が発生します

個人事業主の場合

赤字であれば所得税はゼロ円なので、一切かかりません。

法人の場合

赤字であっても、必ず「均等割」と言って、都道府県民税2万円と、市区町村民税5万円の合計7万円がかかります。

デメリット4 社会保険への加入義務が発生

個人事業主の場合

社会保険への加入義務はありません。

法人の場合

そもそも社会保険に加入したいという方にとっては全然デメリットではないいことですが、法人設立すると加入義務が発生します。
以前から加入義務はありましたが、社会保険事務所から催促の連絡が来ることはあまりありませんでした。
ですが、最近では法人設立してしばらく加入していないと催促の連絡がほぼ来るようになっています。

加入するとどうなるのか

会社と個人で、健康保険料・厚生年金トータル約30%(法人負担15%、個人負担15%)を社会保険料として支払わなければならなくなります(給料の30%という意味です)。

具体的な数字はこちらをご覧くださいませ。

健康保険料は、個人事業主の場合国民健康保険として市区町村で払っている分(3割負担になる保険証がもらえるという制度です)になります。

一方、厚生年金保険料については、65歳以上になるともらえる年金になりますので、いわば貯金のようなものです。

しかし、加入義務が発生するというこは65歳になるまで引き出すことができない貯金をするようなものなので、どうしてもキャッシュアウトがあります。
個人事業で商売をやっていれば、厚生年金への加入義務はないので、その分運転資金など商売に使えていたお金が年金への支払いに消えてしまうというのがデメリットになります。

デメリット5 交際費の支払いについて厳しい

個人事業主の場合

交際費の支払いについては、上限はありません。
また、全然事業に関係のないものを交際費に入れていたとしても経費として認められなくなるだけで、法人に比べてペナルティは少ないものになっています。

法人の場合

交際費の上限は800万円までとなっています。

800万円まで中々つかいきれないから個人の時よりデメリットではないんじゃ?と思われるかもしれません。
しかし、法人の場合だと事業に関係のない交際費を払った場合、ペナルティが大きいのです。

注意
交際費にならない!
→役員への私的なもの
→ボーナスと一緒だね
→役員へのボーナスは経費にならない
法人税アップ!
→ボーナスだから源泉税も払わないとね
源泉税アップ! 

・・・というように、「法人税」も「源泉税」も取られるという往復ビンタを食らうハメになります。。
もし消費税の納税義務者だったら、交際費分も消費税が安くなっていたはずなので、役員へのボーナス扱いになってしまうと、「消費税」まで取られるという、トリプルビンタが完成してしまいます。

もちろん、私的な経費を入れようとしなければこのような事態になることは避けられますので、過度に恐れる必要はないのですが、グレーなものを経費に入れようとするとこのような点がデメリットになりえます。

 

デメリット6 一度決めた給料は1年間変えられない

個人事業主の場合

自分への給料という概念がないので、好きな時に好きな金額だけプライベートに移して使うことができます。

法人の場合

役員への給料は「定期同額給与」といって、1年間は毎月同じ金額を払わなければならないというルールがあります。

儲かったからといって、期の途中から給料を増やして利益を圧縮する、なんてことはできないようになっています。

つまり、プライベートの方で急な出費がある場合に、どうしても今の給料で不足している場合には給料としてもらうことはできないので、あくまでも会社から「貸付」を受けることになります。
その「貸付」を個人から会社に返せればいいのですが、返せない場合だと、翌期に給料を増額して源泉税を増やして納付するという流れを取らなければならないので、ちょっとした手間が発生します。

まとめ

今回は法人化するに当たってのメリット・デメリットの解説をさせていただきました。
以下一覧表にもまとめました。

メリット デメリット
①自分に給料を払って税金を安くする
→利益が多く出れば出るほど個人より税金が安くなる
①会社設立にお金がかかる
→株式会社設立には約30万円、合同会社設立には約10万円
②退職金を支払って税金を安くする ②決算申告書類が複雑になる
→税理士報酬が上がります
③保険料の経費計上ができる(貯蓄性のあるものを除く)
→個人だとMAX12万円まで
③赤字でも7万円の税金が発生します
④消費税が2年間免除となる ④社会保険への加入義務が発生
→キャッシュアウトが増えます
⑤決算月を自由に選べる
→個人は12月決算だけだが、法人はいつでも可能
⑤交際費の支払いが厳密に
⑥赤字が10年間繰り越せる
→個人は3年間のみ
⑥一度決めた給料は1年間変えられない
⑦減価償却せずにとっておける
→個人の場合は強制償却
 
⑧自宅を社宅扱いにできる
→個人よりも経費の範囲が増える
 



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ABOUTこの記事をかいた人

小幡剛史(おばたたけし) 1984年5月15日生 2018年12月に独立した30代のさいたま市浦和区の税理士です。 クラウド会計を活用して経理効率化が得意です。 二児の父です。 週末はスーパーに開店前から並んで、賞味期限ギリギリ激安おつとめ品をゲット!することが最近のマイブームです。 趣味はバイク(ゼファー750RS)・写真(NikonD610)・家庭園芸・DIY・レザークラフト・山登りです。