30万円未満の固定資産の取扱いと償却資産税の関係について

前回の記事で固定資産の一般的な取り扱いについて説明しましたが、今回は更に深堀りして、30万円未満の固定資産を取得した場合に選べる有利な選択肢について説明したいと思います。

20万円以上30万円未満だと選べる選択肢

少額減価償却資産として即費用化可能

10万円以上のものを購入すると固定資産として計上することは前回の記事でご紹介した通りですが、資本金が1億円以下の中小企業で青色申告の場合、30万円未満の固定資産を購入すると、買った金額を一気に費用計上することができます(年間購入金額のトータルが300万円までです)。

これを「中小企業の少額減価償却資産の取得価額の特例」と言います。利益が出ていれば、この規定を使わない手はありません。

使っても使わなくてもOK

この規定は使うも使わないも自由です。利益が出ていないから今年は使わないとか、今年買った30万円未満の固定資産の3つのうち、1つだけしか使わないってこともできます。

ただし、年間購入金額が300万円を越える場合に、丁度300万円になるように、一つの固定資産の取得価額の一部だけを費用化することはできません。

去年適用するの忘れたから遡って申告できる?

これはできません。当初申告要件という縛りがありまして、最初の申告書でこの規定を受けます、と申告書上で宣言しなければなりません。ですので、後だしで出す税金を減らすための申告書(更正の請求と呼びます)に、この適用を受けたいのだけど・・・と書いても、それは認められないようになっています。

なので、適用を受けたい場合には、忘れずに最初の申告書に記載しましょう。

【テクニック】一旦固定資産計上して、全額減価償却費計上するやり方がおすすめ

これはテクニック的な説明ですが、一旦固定資産計上したのち、全額減価償却費として計上する、というやり方がオススメです。

というのも、いきなり「消耗品費」などの費用科目で処理してしまっても大丈夫なのですが、申告書に、全額費用計上した「資産の名称」と「金額」を記入しなくてはなりません。これを忘れてしまうと、一切、適用を受けることはできないのです。

固定資産として計上することで、固定資産管理ソフトにも登録することになりますし、固定資産管理ソフトから、固定資産関連の申告書を吐き出すことができるので、申告書の出し忘れを防ぐことができます。

償却資産税がかかります

土地、建物を持っていると固定資産税がかかるように、そして、車を持っていると自動車税がかかるように、その他の固定資産を持っていると、償却資産税というものがかかります(自動車税がかからないフォークリフトなどの車両は償却資産税の対象です)。

固定資産のトータルの簿価(厳密には違います)が150万円以下であれば税金がかからない(免税)なのですが、それ以上持っていると償却資産税の申告書を市区町村に提出し、償却資産税を納付しなければなりません。

ソフトウェアは償却資産税の対象外です。

税率は市区町村によって変わる場合もありますが、ほぼ1.4%です。

ざっくり言うと、1月1日時点での固定資産の帳簿価額(減価償却後)に1.4%をかけた金額が償却資産税として課される税金になります。

たとえば200万円の複合機を購入した場合には、およそ200万円×1.4%=28,000円を翌年の6月以後に納付しなければなりません(実際はこれより少し少ない金額ですが)。

固定資産を持つだけで課税される不条理な償却資産税ですが、これは次に説明します、「一括償却資産」として処理した場合には、償却資産税はかからないことになっています。

10万円以上20万円未満だと選べる選択肢

一括償却資産として1年で13ずつ費用化可能

20万円未満の固定資産を「一括償却資産」として処理すれば、1年で1/3ずつ費用化することができます。

要するに耐用年数3年で計算できるということです。

通常の減価償却資産の場合には、たとえばPCは4年ですが、ほとんどの固定資産は4年以上の年数が定められていますので、3年で償却できるのは、かなりお得です。

また、通常の固定資産の減価償却の計算と決定的に異なる点は、通常の減価償却資産は月割計算しなければなりませんが、一括償却資産はたとえ、期末最後の日に買ったとしても、1年分の償却費である、1/3をフルに計上することができます。

例 12月決算法人で、定額法を採用。パソコン180,000円を12/31に購入して使い始めた場合

①通常の固定資産として減価償却

180,000円×0.25×1123,750

②一括償却資産として減価償却

180,000円×1/3=60,000

月割計算をしないだけで大きく減価償却できる金額が変わるのがお分かりいただけましたでしょうか。

少額減価償却資産のような300万円の限度額といった枠はない

上記の少額減価償却資産の説明で、年間購入金額の300万円までしか使えません、といった枠はありません。

たとえば少額減価償却資産の300万円枠を使い切ったあと、10万円~20万円の固定資産を購入した場合でも、一括償却資産として取り扱うことは利用できます。

白色申告でも利用可能

ここも、上記少額減価償却資産の説明と大きく異なる点で、たとえ青色申告でなくても(白色申告であったとしても)、一括償却資産は使えます。

少額減価償却資産として即費用化できる選択肢もあり

20万円未満の固定資産に適用できる制度ですので、もちろん、30万円未満に適用できる少額減価償却資産の即費用化の規定も適用することができます。

ただし、少額減価償却資産として即費用化した場合には、償却資産税はかかります。

償却資産税がかからない

これは非常に大きなメリットだと思います。

固定資産が少ない会社の場合には償却資産税の痛みは少ないのですが、会社が大きくなり、固定資産が増えてくると、徐々に償却資産税の納付が増えてきます。

20万円未満であれば、確かに少額減価償却資産として全額を即費用化したほうが、その事業年度の法人税を減らすことはできます。

しかし、一括償却資産でも3年間で全額費用化できるので、長い視点に立てば、償却資産税を支払う必要のない、一括償却資産という選択肢もあり、なのです。

売却・除却した場合にはデメリットも

一見、償却資産税もかからない、月割計算もしなくていい、とメリットが多いように思える、一括償却資産の取り扱いですが、実はデメリットもあります。

それは、もう不必要になったから売ってしまった場合や、捨ててしまった場合でも、「売却損」や「除却損」を計上できず、毎年「強制的に」1/3ずつ償却をしなくてはならないのです。もう既にモノはないにも関わらず、ですが。

法人の場合には、減価償却は「任意」なので減価償却をしようがしまいがどちらでもいいのですが、一括償却資産として処理することを選択した固定資産については、減価償却を差し引いて残っている「簿価」を費用化することはできません。

ここも通常の固定資産として取り扱う場合との相違点になります。

10万円未満だと選べる選択肢

10万円未満であれば、そもそも固定資産に該当することはないため、即費用化するのが一般的です。

しかし、あえて固定資産計上することもできます(会計的には正しくないですが)。

この場合には、費用計上が少なくなる→利益が増える→税金が増えるになりますので、税務署的に問題視することはありません。

また、意外かと思われるかも知れませんが、たとえ10万円未満であっても、固定資産計上する限り、償却資産税は課税対象となります。

まとめ

最後に、これまでの説明を図にしたものを添付します。

今回は10万円~20万円、20万円~30万円の固定資産を取得した場合に、どのように計算するのか、ということと、それぞれのメリットとデメリットについて説明しました。

会社の状況に応じて有利な選択をしていただければと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

小幡剛史(おばたたけし) 1984年5月15日生 2018年12月に独立した30代のさいたま市浦和区の税理士です。 クラウド会計を活用して経理効率化が得意です。 二児の父です。 週末はスーパーに開店前から並んで、賞味期限ギリギリ激安おつとめ品をゲット!することが最近のマイブームです。 趣味はバイク(ゼファー750RS)・写真(NikonD610)・家庭園芸・DIY・レザークラフト・山登りです。