印紙を貼るのは契約書だけ?
5万円以上の金額の領収証や一定の契約書に印紙が必要なことはよくご存じかと思います。
もし、書類のタイトルが「覚書」や「念書」だった場合、印紙を貼る必要はあるのでしょうか?
契約の内容で判断する必要あり
タイトルは関係ない
実は印紙税の考え方は、書類に記載された内容から課税文書に該当するかどうかを判断することになっていて、タイトルはどう書かれていようが、或いはタイトルが無かろうが関係ないのです。
なので、「契約書」と書かれている書類でも、印紙がかからないケースもあれば、「覚書」や「念書」と書かれている書類でも印紙がかかるケースもあるということです。
印紙税法
課税物件表の適用に関する通則5
「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。
時系列で考える必要がある
たとえば、工事を発注する際に、注文書を作成(工事業者が作成した注文書にサインだけすることもあります)して工事業者に渡すことがあると思います。
一般的に注文書には○月×日に□□工事をいくらで注文します。と書かれていると思いますが、これには印紙は不要です。
その後、注文書を渡したのち、工事業者から「注文請書」を渡されます。こちらには○月×日付注文書の内容をお請けいたします、と書かれていますが、こちらには印紙が必要になります。
なぜお客側から渡す注文書には印紙不要で、工事業者側の注文請書には印紙が必要なのでしょうか。
その理由ですが、契約が成立した時期が重要になります。
注文書を渡した場合、注文した時点では、お客から契約の申込はされていますが、注文(契約の申込)に対する工事業者の承諾はされていない状態です。
なので、注文書を渡した段階では契約は成立していないので、注文書に印紙はかかりません。
一方、工事業者から渡される注文請書は、お客からの注文に対して、その仕事請けます!という注文に対する承諾がされるので、この時点で契約が成立すると考えられることから、注文請書は課税文書として印紙がかかる、という考え方になります。
印紙税法基本通達
契約の意義
第14条 「契約」とは、互いに対立する2個以上の意思表示の合致、すなわち一方の申込みと他方の承諾によって成立する法律行為をいう。
書類はすべてよく読み込む
ここで注意してほしいのが、注文書=印紙は不要と思い込まないでほしいのです。
というのも、注文書とは別に「基本契約書」を結んでいて、その中に、「注文書を工事業者に渡したときに契約が成立する」と記載されていた場合には、注文書の作成により契約が成立することになるので、注文書を作成した時点で印紙が必要となります。
つまり、関連する書類すべての内容を吟味した上で、いつの時点で契約が成立するのか、ということも判断しておかないと、思わぬところで印紙が必要となる書類がある場合があります。
実はこれはかなり恐ろしいことで、上記で説明したように、一般的に注文書には印紙は不要、と認識されていると思いますが、税務調査などで関連書類をチェックされた際に、実は注文書にも印紙が必要となった場合には、最長5年間分も遡られてペナルティ(過怠税)とともに印紙税を徴収されてしまうことになります。
まとめ
今回は契約書のタイトルと印紙の関連性、つまりタイトルは印紙の要不要については関係がないということと、契約成立の時期の見極めの重要性について書かせていただきました。
思ってもみなかった書類で印紙が必要となる場合が生じますので、きちんと契約の内容を読み込むようにしましょう。
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