契約書を複数作った場合の印紙負担は?
契約書を取り交わすときに、2部作成して甲乙それぞれ一部ずつ保管、という事が書かれていることがよくあり、印紙はそれぞれで負担している事が多いかと思います。
そもそも同じ文書を2部作った場合には何故どちらも印紙を貼らなければならないのでしょうか。そして、この印紙は文書を保管する側でそれぞれ負担せねばならないのでしょうか。
(※契約書が印紙税法でいう課税文書であるという前提で書かせていただきます。)
文書を作れば作るほど印紙が必要
文書課税という考え方
印紙税は、文書課税という考え方でできていまして、課税対象となる文書が存在するだけ課税される事になります。
なので1部作ろうが、10部作ろうが、全てが課税される事になります。
課税対象となる時期
仮に副本・謄本・写しなどと記載があったとしても、当事者同士でハンコが押されている、サインがされているなど当事者間で合意されている事が明らかな場合には、課税となってしまいます。
厳密に言うと、一方のハンコ・サインがされている状態で、もう一方がハンコ・サインをした瞬間に当事者間で合意された事になるので、納税義務が生じます。
逆を言えば、当事者一方のハンコ・サインしか無い場合には、当事者間で合意されているとは言えないため、これは課税対象とはなりません。
印紙を節約できる場合
コピーやファックスですが、元となる書類を単に複写したものになる場合には、課税対象とはなりません。なので1部だけ作成して相手側はコピーで保管するとした場合には、負担する印紙は1部分だけになりますので、印紙を節約することができます。
例えば、新築マンションを購入した場合、売主の建設会社が原本は買主であるお客様保管(印紙もお客負担)で、コピーを売主が保管して印紙を節約しているケースがあります。
またPDFなどの電子データとして保存する場合は、印紙税が想定している「文書」には該当しない事から、印紙税はかかりません。
但し、コピーを取った場合に、原本とコピーに割印を押して、コピーを取った事を証拠として残した場合には、単に複写したものには該当しませんので、課税となりますのでご注意ください。
印紙税法基本通達
(同一の内容の文書を2通以上作成した場合)
第19条 契約当事者間において、同一の内容の文書を2通以上作成した場合において、それぞれの文書が課税事項を証明する目的で作成されたものであるときは、それぞれの文書が課税文書に該当する。
2 写、副本、謄本等と表示された文書で次に掲げるものは、課税文書に該当するものとする。
(1) 契約当事者の双方又は一方の署名又は押印があるもの(ただし、文書の所持者のみが署名又は押印しているものを除く。)
(2) 正本等と相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることの契約当事者の証明(正本等との割印を含む。)のあるもの(ただし、文書の所持者のみが証明しているものを除く。)
国税庁タックスアンサー
No.7120 契約書を複数作成した場合の課税関係
契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名若しくは押印又は証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません。
同じく、ファックスや電子メール等により送信する場合も正本等は送付元に保存され、送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象とはなりません。
印紙の負担はどちらがしてもよい
契約書を2部作成した場合、それぞれで印紙を負担しなければならないのでしょうか。
答えは、どちらが負担してもよいという事になります。
正確に言うと、契約書にハンコやサインをした者は印紙税法上の納税義務者に該当するので、双方に印紙を負担する義務が生じます。そして、文書に課税された印紙をどちらか一方が貼付して、消印した場合には納税義務が消滅する事になります。なので、この印紙をどちらが負担するかはビジネス上の交渉できる事柄になります。
印紙税法基本通達
(共同作成者の連帯納税義務の成立等)
第47条 一の課税文書を2以上の者が共同作成した場合における印紙税の納税義務は、当該文書の印紙税の全額について共同作成者全員に対してそれぞれ各別に成立するのであるが、そのうちの1人が納税義務を履行すれば当該2以上の者全員の納税義務が消滅するのであるから留意する。
消印の仕方についてはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は契約書を複数作った場合の印紙の負担について記事にしました。
曖昧に、従来からの流れで印紙について、お互いそれぞれ負担しあうという事をやりがちですが、法律上はどちらが負担してもよい、という事を覚えていただければと思います。
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