帳簿をつけるのメンドくさい。
税理士に丸投げして、入力してもらったほうが楽だし、間違いがないだろう。
そんな風に考えている経営者の方も多いかと思います。
しかし、自分で経理をやらず税理士に入力作業をやってもらうと思いもよらない事態に陥ってしまう、ということが往々にしてあります。
リアルタイムで経営成績が分からない
税理士に丸投げすることのデメリットの一つが、リアルタイムで経営成績が分からなくなるということです。
- 4月中旬に税理士がお客様に訪問して3月分のレシートや請求書などを回収
- 4月中旬から5月初旬の間に税理士で入力作業実施
- 5月中旬にお客様に訪問して3月の経営成績を報告。
こういう流れだと、2か月も前の数字を見ていることになってしまいます!
変化の激しいこの時代に、2か月も前の数字を見て経営判断をするようでは非常に危険です。
不思議な勘定科目・身に覚えのない数字になっている
法人の場合、出来上がった数字を見てみると、
- 「役員貸付金ってなんだ??」
- 「経費が思ったよりも少ない気がするけど…」
こんな事態になっていたりします。
税理士側からすると、レシートをごっそりいただいて入力作業をするわけですが、本当に事業に関係のある支払いなのか判断できません。
なぜなら使った人がどういう状況にあったのかは、その人自身じゃないと分からないわけですから。
他人である税理士がレシートだけを見て事業に関係しているのかどうかまでは判断できません。
例えば、飲食のレシートで「お子様ランチ」が出てきたとします。そうすると、税理士としては、「これは事業には関係ないだろう」と思って、
役員貸付金 | ××円 | 現金預金 | ××円 |
なんて仕訳を切ったりします。
しかし、たまたま取引先との打合せに、取引先のお子様が来ている場合にごちそうしてあげましたということであれば、「会議費」で良いと思います。
経費になるかならないかの判断は、その場にいて実際にお金を支払った経営者ご自身しか知りえないことです。
税理士に入力を頼んでしまうと、何でも経費では落とせない、という保守的な思考が働いて、税務調査で指摘されないように経費にはしないようにしておこうっと、という事になってしまいます。
経費になるかならないかの判断基準については、こちらをご覧ください。↓
どこまで認められる?経費の範囲について
本来経費になるものが、役員貸付金になっている、ということは往々にしてあります。
そして銀行から借入をしている人にとっては、役員貸付金がある決算書の評価は悪くなってしまいます。
何故なら銀行側からすれば、「会社に貸した金が役員個人に流れてプライベートに使われてる!」という判断になってしまうからです。
決算対策・税金対策が後手後手になる
リアルタイムで経営成績が分からなくなる、という事と関連しますが、経営成績が分かる時期が遅くなればなるほど、決算対策に使える時間が限られてきます。
3月に決算を迎える会社の場合、経理を丸投げしてしまうと、1月分の経営成績が判明するのが、3月中旬です。
3月中旬にお客様に訪問して、今期利益が出そうだから節税対策を・・・といったところで、あと15日しかありません。
これでは、やることは限られてしまいます。
もし、2月に利益がドカッと出る場合には、4月にならないと経営成績は判明しないので、その時にはもう手遅れです。
だからこそ、早い段階で経営成績を把握することが必要です。
リアルタイムでなくとも、せめて翌月上旬には前月分の経営成績を知っておくべきでしょう。
- 決算時いくら利益が出そうなのか。
- その利益に対して、どれくらい税金は出そうなのか。
- その税金を支払うためには、どれくらい現金預金を残しておけばいいのか。
- 決算対策に使えるお金はどれくらいなのか。
早い段階で経営成績を把握することによって、決算時の利益の着地予想はより正確になり、余裕をもって対策を打つことができるようになります。
いつまでも数字を理解することができない
自分で記帳していないことの弊害の一つは、出来上がった試算表なり、決算書なりの科目の数字が、どういう数字の集合なのか、実感がわかないことでしょう。
例えば車を保有している場合、試算表や決算書にはこういった科目が現れることでしょう。
車両費 | ××円 |
旅費交通費 | 〇〇円 |
保険料 | △△円 |
修繕費 | □□円 |
では、ガソリン代は「車両費」、「旅費交通費」どちらに入っていますか?
自動車保険は「車両費」、「保険料」どちらですか?
車検代は「車両費」、「修繕費」どちらですか?
入力を税理士に丸投げしてしまうと、こういったことが分からなくなってしまいます。
もし車をあまり使わなくなるようになった場合、レンタカーを借りた方がいいのか、それともこのまま車を持ち続けた方がいいのか、試算表や決算書の数字から検討するべきです。
しかし、丸投げしてしまった場合には、車両関係の費用がどの科目にどこまで入っているのかが分からなくなってしまいます。
だからこそ、自分で管理しやすいように、ルールを決めて入力したほう良いのです。
そうすることによって、後日数字を見返して分析や検討することができるようになります。
クラウド会計にすれば解決するか??
クラウド会計のいいところは、銀行の預金データや、クレジットカードのデータを仕訳として自動で作成してくれるところです。
全部が自動というわけではなく、MFクラウドであれば勘定科目を確認して「登録」ボタンを押していく必要がありますが、日付も数字も自動で入るため、すべて手入力していくよりも圧倒的に経理にかかる時間は短縮することができます。
ただ、何でもデータ連携できるというわけではありません。
預金データ・クレジットカード共に、オンラインで連携できるようにしなければならないので、これに対応した金融機関やカード会社を選ばなければなりません。
また普段現金の支払いが多いのであれば、現金からクレジットカード払いになるように、業務のやり方を変えていく必要があります。
既存のやり方を変えてまで、やる価値はあるのか、と問われたら、もしまだ税理士に記帳代行でお願いしているようだったら、その価値はあるでしょうと答えます。
記帳代行は面倒な処理を税理士にやってもらっている、という風に一見楽ができるように思われますが、それは自社の経営成績を分析・把握することから逃げています。
クラウド会計を使い、自社の中で、きちっと数字の分類ルールを作って、帳簿をつけていくことができれば、記帳代行でデメリットだったことが解決します。
- リアルタイムで経営成績を把握することができる。
- 余裕をもって決算対策・税金対策に対応することができる。
- 自分でお金の入出金を分類することで数字が理解できるようになる。
→すなわち経営の意思決定を迅速に行えるようになる!
そして我々税理士は、記帳代行のその先にある提案業務にこそ、税理士としての存在価値があると思っています。
納税予測をした上で、お客様の話をしっかり聞き、決算対策のご提案を差し上げるということも税理士としての役割の一つでしょう。
クラウド会計をうまく活用して、税理士を記帳代行として使うのでなく、税理士にしかできない仕事をしてもらった方がお客様にとっても支払う報酬に見合うものがあると思います。
まとめ
税理士に記帳を丸投げしたときのデメリットと、クラウド会計の利便性について書きました。
税理士に記帳代行で丸投げされている方は、自分で経理をしてみたいと税理士に相談されてみてはいかがでしょうか。
帳簿のつけ方を教えてもらうことも一つの手だと思います。
その上で、クラウド会計に対応しているか聞いてみましょう。
もし対応していないということであれば記帳の手間を省いて、未来の数字をいかにして作っていくか、それを一緒に考えてくれる税理士を探すことを検討されてみてはいかがでしょうか。
【編集後記】
アイキャッチ画像は我が家のブルーベリーの木に咲いた花です。
いよいよ本格的に暖かくなってきたので、今年も家庭菜園をやろうかと。先日ゴーヤ、バジル、ルッコラ、シソ、タイムの種を買ってきましたので、ゴールデンウィークに植えようと思っています。
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